人生時間

革靴を磨きたい衝動にかられる

人間、皆がそうなのかどうなのかを知りえないけれど、私は「衝動癖」がある。

何かのきっかけで、目に入ったり、耳に入ったことをきっかけに、それが日を追うごとに膨れ上がって、その事で頭がいっぱいになる。

いっぱいはオーバーだけれど、半分は埋まってしまう。

それは、見るだけの物、さんざん飽きるほど見て卒業するもの(比較的短期に)実際に実践して、飽きるまでやってみて、そして卒業する。

そんな事をいくら繰り返してきただろうか。

今、私は無性に「革靴を磨きたい」

正視できなかった「靴磨き屋さん」

今回の衝動のきっかけは思い出せない。

ただ、田舎から札幌に出たきた45年ほど前、札幌駅から大通り間の通りに何人もの「靴磨き」のおばあさんがいて、男性客の革靴を伏せるように磨いていた。

それが可哀想に見えて正視ができなかった事を、ふいに思い出した。

そう言えば、もう長いこと見かけていないなぁ。

あの当時のお婆さんは、ほとんどもうご存命ではないだろうなぁ。

そんな事を思い出していた。

きっかけといえば、それがきっかけになるかもしれない。

あの頃、その街の「靴磨き屋」さんが本当に可哀想に見えた。

それは、人生がもう充分に後半で、そんなお婆さんが敷物の上とはいえ地べたに座って、椅子に座っているずっと年下の男性の靴を磨く。

話もしないで、ただひたすら、キュッキュッ、シュッシュと磨いている。

世間知らずの18歳では正視などできない。

自分の母の老いた姿を想像してしまう。

だから、あのメインストリートを歩くことが少し苦手だった。

果たしてその真実は?

今ではそんな事は考えない。

あの頃は景気も良かった。

おそらくは、時間のあるおばあさま方の絶好のお小遣いのタネだっただろう。

どうやったら、そんなに古びた服が作れるのかと思うほどの年季の入った服を着て、どう見てもお金に困って仕事をしているようにしか見えなかった。

きっと、家でも質素に慎ましく静かに生活をしているのだろう。

お昼、ちゃんと食べているのだろうか。

お客さんから、苦情や叱責を受けることもあるだろうなぁ。

それでも、きっと食べるために、やめる事もできないんだろうな。

可哀想だよ、おばあちゃん…。

18歳の頭はその思いでいっぱいになったものだ。

でも、今ならわかる。

商売をする許可などのことはわからないけれど、あれは儲けたな…。

時間をムダにするくらいなら、体の自由がきく間は働こう。

働くお年寄りに、世間は厳しくない(少なくともあの頃は)

単価はわからないけれど、原材料を除いても、利益率は高いはずだ。

相当に高い。

一生懸命に磨いているお婆さんに、誰が苦情なんて言うだろう。

皆、自分の母親や祖母を考えるに違いないのだ。

自分の母が潤ってほしい、お金に困らないでほしい。

そんな思いで、あそこに座っていたに違いないのだ。

そして、お婆さんはきっといい生活をしたことだろう。

だって、稼いでいたもの。

今なら、こういう風に思うけれど、18歳はどうにも額面通りにしか物事を見ることが出来なかった。

あの頃の靴磨きのお婆さまがた。

お疲れさまでした。

まずは靴を買おう

私はいわゆる「良い靴」を持っていない。

仕事を退職してから、一足も新しい靴を買ってもいない。

もともと、ヒールなんて履かないし、果てしなく「足にやさしい」横幅の広い靴を履いてきた。

この傾向はきっとこれからも変わらない。

女性女性した靴は苦手だ。服も苦手だ。

だから、必然的にスニーカーや少しかしこまってもビジネスシューズだ。

ここから1足だけでも次に進む必要がある。

ついでに足も大きい方なので、どんな革靴に巡りあえるかわからない。

とりあえず、少し贅沢と思うくらいの1足が欲しい。

その1足を買うために、仕事を頑張ろうと思う。

靴を磨く時に使うブラシは「馬毛」と「豚毛」があるようだ。

クリームもいろいろとあるようだ。

このあたりは、日本一の職人さんの動画を参考にさせていただいている。

思い返すと、昔むかし、実家にはそのひと揃えがあった。

いつも行くリーズナブルな靴屋さんではなく、良い靴屋さんを覗いてみるのがまず最初。

そこで下勉強をして、お金少しためて、贅沢な1足を買おう。

そして、馬の毛と豚の毛と、キレイな布とクリームで磨きたい。

ひたすら磨きたい…!

鉄は熱いうちに打て!

思いも熱いうちに討て!

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