64歳の日記

友達がいない…の話

どうやら私には「友だち」がいないらしい。

正直言って、知らなかった。

初めて「友だちがいない」という事を言われたのは30年以上前の話。

当時の子どもの保育園の父母の会の何かの宴会の席で

当時の会長(女性)に言われた。

「友だちいないんだってね」と。

「へ?」

いきなりこの人は何を言っているのかと思った。

大勢の父母を束ねるだけあって、存在感の非常に大きな人で

良くも悪くも非常に目立つ人で、きっとどの環境であっても「会長」になった人だろう。

私はこの人に私自身の事はほとんど知られてはいなかったと思う。

当然、同じ会にいて役員をしていたから、存在も知っていたし、

会えば挨拶以上の話もした。

しかし、私はこの人に評価されるほどの付き合いはない。

それなのに、いきなり人格否定か?とも思われる「友だちいない」発言はどうなのか。

「かおりちゃんが言っていた」

そうだった。

この会長の義理の妹は私の昔の会社の後輩社員だった。

それも偶然に知った。

どうやら、その義妹から私に友だちがいないと聞いたらしい。

でも、そう言われても、私は会長の私をいじる「愛の言葉?」だと思いこんだ。

会長が本当の話として言っているとは思っていなかったのだ。

私はずっと、自分は友だちが多いと思っていた。

学生時代から、社会人になっても、友だちは多いと思っていた。

だから、「友だちがいない」という言葉は侮蔑後だと思っていた。

ずいぶん失礼な事を言う人だと思った。

そして、そんな事をかつての後輩が言っていたとは、実に心外だった。

だから、聞き流して、ただの「からかい」だと思った。

そして数年後に昔々、とても親しかった年上の友人から言われ言葉がある。

「人に関心ないよね」

この時に、上記の「友だちいない」発言を思い出した。

これは、少し納得した。

たしかに、あまり人の事は幸不幸のどちらの事であっても、私は関心があまりない。

これは言われて、すぐにあれこれ思いに至り、そして納得した。

この二つは意外に私の人生の中で、大きな節目になった気がする。

知らない自分を見せつけられた気がしたからだ。

実は、この10年あまり、私は自分に「友だちがいない」という事に直面している。

あれほどいつも人と一緒にいたのに、あれだけいつも誰かが遊びにきたり

泊りに来ていたのに。

だから、友だちは多いと思っていたのに。

気がついたら、友だちはいなくなっていた。

そして、それに気がつかずにいた。

決して社交的ではない私の性格。

距離感を詰められるのが大の苦手な性格。

人に会わないことも、誰とも何日も喋らなくてもまったく苦にならない、

孤食もまったくなんとも思わない。

むしろ、人といるよりも一人でいる事を好む。

涙が出るほど孤独を感じて、寂しく思ったことは人生に一度しかなかった。

だから、自分が一人になっていたことに全く気がついていなかった。

けれど、今でも、まったく気にかけてはいない。

ここひと月あまり、実は相当に凹んでいた。

やろうと思っていた事はまったく進まなくて、やっと腰を上げて手にかける事ができても

まったくそれが日の目を見ることもなく、その気配さえなく。

何のためにやって、何で生かされているのだろう。

そんな気持ちになって、どんよりの日々を過ごしていた。

「あいつに会いたい」

言葉は悪いが、「あいつ」は友だち。

もう50年以上の付き合いの友だち。

無性に会いたくなった。

今のこの気持ちをただ聞いてほしかった。

否定をしないで聞いてほしかったが、多分、あいつは否定も入れてくるはずだ。

それでも、会いたいと思った。

昨日の今日で約束を取り付けて、今日軽くランチをした。

軽い話をしたあとに、少しドキドキしながら、今の自分の気持ちを話した。

あまり、私は自分の話をしないから、気持ちを話すこと、凹んでいることなどを言うことは

体育館の裏で「告白」をするくらいの緊張感をもった。

褒められて伸びるタイプ?の私に対して、友だちは時折否定も入れてくる。

でも、素直に聞き入れた。

楽しかったワケでもなく、救われたワケでもなかった。

けれど、いろんな角度から出てくる友だちの言葉がありがたかった。

友だちって、いるに越したことないなぁ。

ありがたいなぁ。

そんなふうに思った。

初めて思った。

その友だちに、「友だちがいない」話と「人に関心がない」話をした。

友だち曰く…

確かにね。そうかも。顔は広かったけどね。

そうだったのか。

私は顔が広かっただけなんだ。

上にも下にも大勢の知り合いがいただけだったんだ。

すごく腑におちた。

この友人。

私は多分、この友人だけは生涯「友だち」と思うのだろう。

今までがそうだったように。

これからも。