人生時間

ミスターレディのお姉さま方に

私の最近の日課に「歌う」がある。

なるべく朝のうちに声を出しておく。
今はまったく声が出ないので、少しずつでも声を出していかないと
いつか、口からは空気だけが漏れるようになりそうで、それがひたすら怖い。

歌う際には、だいたいお手本を耳にしながら一緒に歌う。
その私の現在の先生が「ベティママ」である。

大阪の有名ゲイバーのママなので、多くの人がご存じかと思うし、
多くのファンがおられると思う。
今ではゲイバーのママでありながら、実力派のシンガーでもある。
私も相当にファンだ。

今から25年くらい前に、よくテレビに出ておられた。
ベティさんに限らず、ひとつの「ゲイ」ブームで、
私がよく見ていた番組では「ミスターレディ」と呼ばれていた。

司会の上岡龍太郎さんに、「花を超えてセキセイインコの世界」と言われていたほど
色も匂いも発するような集団の、お姉さまたちがいた。
当時の私は、彼女?たちと上にも下にも歳が近かった。
何度もビデオテープを回して、楽しませてもらったものだ。
(実はテープからDVDに移し替えて今も見ている。今、Nowの話)

本当に女性になりたい人や、どう見ても「営業オカマ」の方。
女性と見分けがつかない人が多くて、驚くとともに世界の広さを知った。

手術をして、身も心も女性になっている人も多くいて、
過去、男性だったなんてとても信じられなかった。
どれだけの努力を、男性の肉体でしていたのかと、
同情とともに、尊敬をしていた。

そんな女性になりたかった方。
女性に生まれたかった方。
自分の性が一致していない事に悩んでいる方。
悩んだ末に見つけた世界。
その世界で輝きながら、それでもきっと心に根強くある葛藤。

テレビ番組では楽しく笑わせてくれているが、
一人で泣く夜もあるだろう。

それでも、自分は女性であるから、女として自分を磨く日々。

真剣に女性になりたい人に申し訳ない

そんなお姉さまたちに、私は申し訳なく思う。

まったく、女の無駄遣いに暮れていた自分。

子どもの頃から、本来美しいはずの20代。
頑張りようによっては艶のある30代。
まだまだイケたはずの40代。
もう少し頑張れただろう50代。

いずれの時も、私はサボっていた。

それでも、私は戸籍も、多分見た目も女性である。
どれほどサボりまくっても、私は男性にはならない。
それに、甘えていたのだ。

かの人たちは、売っているのなら買うだろう。
絶対に女性である事実を。

そんなお金で買えない物を生まれながらにして持っている私は
彼女たちの苦労を知りながら、努力もせずに「女性」でいた事を申し訳なく思う。

許してくれとは言わない。
けれど、私は心底認めている。
その存在を。

私は、LGBTQ(今はQもあるんだって)に強い関心がある。
今は条件が整えば、ハードルは高いが戸籍を変更する事も可能になった。
すごい時代の進歩だと思う。
自治体にもよるが、パートナー制度も整備をされてきた。
同時に認めない自治体もある。
絶対に認めない人たちも多い。
この荒波に抗い、時に流されながら、泣き笑いをしている彼女たちに
大きな魅力を感じる。
その感動と魅力の大きさと同じくらいに申し訳なく思うのだ。

申し訳なく思うけど、私はこれからも努力はしない。
おばさんを超えて、おじさんの域に達しているが
このままを突き進むだろう。

ただ、第三の性、第四の性、第五の性?
きりのない新しい性を私は違和感なく迎える事ができる。

いつか、同性間でも結婚が認められる日本になってもらいたい。

それにしても、ベティさん。好きです。