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今日は久しぶりに気温が高かったので、洗車をしてきた。
途中手洗い時間のあるコース、600円也。
洗車をして、一所懸命ワックスもかけた。
ワックスまでやったのは、去年の夏以来だ。
洗車のガンから放たれる高圧の水を見ると、私はいつもある光景を思い出す。
もう23年ほど前。
私の車はキャロルという軽自動車だった。
青い車体でドアだけ黄色のアクセントをつけた、それはそれは可愛い愛車だった。
そのキャロルに、娘と当時飼っていたゴールデンレトリバーを乗せて、きつきつの状態で走っていたものだ。
後部座席にはドアがないので、ゴールデンは運転席から乗り込んで、運転席と助手席の隙間から勢いよく後部座席に飛び込んでいた。
その一連がダッシュのように早くて、いつもののんびりしている我が家の犬の唯一の活発な姿だった。
可愛い車をいつもキレイに保ちたくて、私はマメに洗車に通っていた。
その日も、自宅近くのスタンドに行った。
乗ったままのセルフ洗車機。
もうすっかりと慣れている(何もしないから)
いつもどおりにドライブスルー型の停止線までいった。
あとは、ひたすら終わるのを待つのみ。
青や黄色のブラシを眺めている。
その時に、私はあるミスに気がついた。
ラジオのアンテナをしまい忘れている。
電動ではないから、自分で伸縮させるタイプ。
洗車の時は、事前にしまいきらないといけなかった。
今日も全部、伸ばし切っている。
それに気づいたのは、もうブラシがキャロルの鼻っ柱を洗い始めている時。
水は全体にかかっている。
あー!
あー!
ど、どうしたらー!
窓はもう開けることはできない。ドアも開けることはできない。
電動の窓ではないから、手動であけることは可能だが、すでに危険な状態になっている。
私は犬とともに、中で叫んでいた(犬は叫ぶ私に驚いていたが、吠えはしない)
騒ぐと万一状況を気づいてもらえて、停止してもらえるかと、叫んだ。
すぐにブラシはアンテナまできた。
キャロルのアンテナは弱かった。
すぐに少しずつ左右に揺れ、全体を洗うブラシに何度も何度もなぞられるうちに、ついにほぼ180度近くまで(車体と水平)横になってしまった。
何度も叫び、もう終わってくれと祈ったが、こんな時にかぎって長時間作業をしているような感覚になる。
猫だと思った。
今や、このアンテナは猫のヒゲだと思った。
猫の野放図に伸ばしているヒゲ。
それが左右に揺れたり、横になったり。
なぜ、猫と思ったのかはわからないけれど、強烈に、それは猫のヒゲだった。
すっかり、猫のヒゲとなったアンテナの状態で、洗車機から出てきた私と愛車は、そのまま拭きあげもせずに家に戻った。
恐らく、スタンドの人にも気づかれてはいなかったので、この失態を見せたくはなかった。
家に戻り、少しずつ少しずつ横になったアンテナを戻してみた。
まだちぎれてはいなくて、円柱が楕円形に変形していたけれど、戻しているうちに、少しずつ亀裂が入って、当日だったかは忘れたが、結局アンテナは取ってしまった。
それからすこしたって、16年乗ったキャロルは手放した。
新しい車に乗り換えたからだけど、下取りになったが、おそらくは廃車になっただろう。
モノにも魂があると思っている私は、キャロルに対して本当に申し訳ないと思った。
あの「なすすべのない状態」は何に例えることができるだろう。
もう、決まったコースに突き進むだけの状態。
戻ることができない残酷さ。
乗ったことを後悔しても、引き返せないジェットコースターだったろうか。